コラム
審美歯科に関するお役立ちコラム
インプラントと入れ歯は、高齢者にとってそれぞれ異なるメリットとデメリットがあります。インプラントはあごの骨に直接埋め込むため安定性が高く、天然の歯に近い機能を持つ一方、手術や費用がかかることが特徴です。この記事では、インプラントと入れ歯の違いや、インプラント治療のメリット、さらに高齢者が治療を受ける際の注意点について詳しく解説します。
目次
失ってしまった歯を補う治療には、インプラントと入れ歯の2種類の方法があります。 老化や病気によって歯を失ってしまったとき、インプラントと入れ歯のどちらの治療法にするか迷う方は多いでしょう。 インプラントと入れ歯の違いやそれぞれの特徴を紹介するため、自分に合う治療法はどちらか比較してみてください。
歯科インプラントとは、顎の骨に直接埋め込む人工歯根のことを指します。虫歯や事故などで歯を失った方でも治療できるのが特徴で、本物の歯のような見た目に近づけやすいです。また、異物感も感じにくいため自分の歯と同じような感覚で食事や会話を楽みやすくなります。 しかし、インプラント治療は原則保険適用外であり、健康保険が効かず全額自己負担になるケースが多いです。そのため、歯1本あたりの治療費が10~50万円と高額になることがデメリットとして挙げられます。ただし、外傷や腫瘍で顎の骨を失ったり、生まれつき歯や顎の骨がないなどの異常があったりする場合、保険が適応される可能性があります。該当する可能性がある方は、あらかじめ医師に相談してみてください。
入れ歯は取り外しができる義歯のことです。お手入れしやすく、保険が適用されるため始めやすい点がメリットとして挙げられますが、入れ歯の種類によっては適用されない可能性もあります。 以下は、代表的な3種類の入れ歯についてそれぞれの特徴を表にまとめてみました。
総入れ歯 | バネあり部分入れ歯 | バネなし部分入れ歯 | |
---|---|---|---|
特徴 | 上下どちらかの歯がすべてない状態で装着 | 残っている周りの歯に金属製のバネを引っかけて固定する | 歯茎と似た色の樹脂で作られているため審美性は高い |
保険適用 | 可 | 可 | 不可 |
保険適応の治療方法もあるため、費用を抑えやすいメリットもあります。ただし、食事や会話ししているときに外れたり、異物感があってうまく話せなかったりするデメリットもあるため注意が必要です。
高齢になると老化によって歯茎が痩せたり、口腔内の病気が原因で歯を失ったりする可能性があります。その際、インプラントの埋め込みを選択することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
入れ歯の場合、口腔内の粘膜や歯茎を広く覆って使います。そのため、歯茎と入れ歯の隙間に食べ物が挟まって痛みを感じたり、噛み心地に違和感じたりするデメリットがあります。また、味・食感・温度などが分かりにくくなるため、本来の歯と比べると入れ歯は思い切り食事を楽しめないと感じることもあるでしょう。 インプラントなら、口腔内の粘膜が覆い隠されることがなく、本来の味や食感、温度を感じられます。また、本来の歯と同じようにしっかりと噛めるので、固いものや噛みにくいものでもおいしく味わえるでしょう。実際に、入れ歯からインプラントに変更する過程で「食事がしやすくなった」と感じる声もあります。歯を失っても食事を楽しみ続けたい方はインプラントがおすすめです。
顔の印象は歯が大きく左右し、欠けたり抜けたりしている状態では審美性が下がってしまいます。入れ歯の場合、周りの歯と色味が違って不自然に見えたり金具の部分が見える可能性があるため、審美性にもこだわりたい方にはあまりおすすめできません。 インプラント治療であれば、なるべく周りの歯に合わせて色味を調整できるので、きれいな見た目に仕上げられます。本来の歯に近い状態を保てるので、審美性が上がるのが大きなメリットです。 そのため、笑ったり会話をしたりするために口を開けることへの抵抗は少なく済むでしょう。
「噛む」という行動は脳に刺激を与えます。そのため、ひと口で噛む回数が少なかったり噛むときの力が弱かったりすると、記憶や空間を認識する認知能力が低下してしまう可能性があるといわれています。このことから、歯の状態と認知症とは深い関係があると考えられており、日本歯科医師会によると歯を失った方がインプラントや入れ歯などの義歯を使用しない場合、認知症の発症リスクが最大で1.9倍に跳ね上がる研究結果も出ているようです。 入れ歯でも歯がない状態よりはしっかり噛めるので、認知症の予防につながります。しかし、インプラントの方がよりしっかり噛むことができるので、より高い認知症の予防効果を期待できるでしょう。
誤嚥性肺炎は、誤嚥が原因で肺が細菌感染し、炎症を起こすことで発症する肺炎です。高齢になると飲み込む力が弱くなるため、食べ物や唾液が肺に繋がる気管に誤って入ってしまう「誤嚥」をしやすくなります。 入れ歯の場合は1日2回以上の手入れが必要ですが、きちんと手入れできていなければ食事の際に入れ歯に繁殖した細菌を誤嚥し、肺炎を引き起こす可能性が高まります。 インプラントであれば通常の歯磨きで毎日手入れができるため、入れ歯よりも清潔な状態を保ちやすいです。万が一誤嚥しても細菌感染するリスクは低いため、誤嚥性肺炎の予防につながります。
バネあり部分入れ歯の場合、両隣の歯にバネをかけて固定するため、長期間装着していると隣の歯に負担がかかります。徐々にバネがかかっている歯根は弱り、最終的には抜かなければならなくなるケースも少なくありません。 するとさらに両隣の歯にバネをかける必要があり、同じように繰り返すと部分入れ歯の範囲は広がってしまいます。インプラントであれば、周りの歯への負担を抑えやすく、健康な歯をさらに失う心配も軽減されるためおすすめです。
若い方は特に問題なくインプラント治療を受けられますが、高齢になるとインプラント治療を受ける際の注意点が増えていきます。高齢の方がインプラント治療を受ける際に注意することとして、以下の3つがあげられます。
ここからはそれぞれの注意点について詳しく解説していくので、高齢でインプラントを検討している場合は参考にしてみてください。
インプラントは外科手術のため、持病がある方は注意が必要。糖尿病や高血圧の方はリスクがあるため医師と相談。 インプラントの治療は外科手術が必要なため、高齢の方は全身に渡る健康状態の確認が重要です。とくに、糖尿病や心疾患、骨粗しょう症や高血圧などの持病がある方や治療のために薬を服用されている方は、健康な方よりも注意しなければなりません。 まずは初回の問診やカウンセリングで担当の歯科医師に持病の有無や病状など現在の状態を正しくきちんと申告して、インプラント治療が可能かを相談してみてください。
インプラントを長く使い続けるためには、埋め込んだ後も定期的に通院し、きちんとメンテナンスを受けなければなりません。しかし、高齢の方の場合は介護が必要になるなど、治療のための通院が難しくなる可能性もあります。そのため、通院できない場合に備えた対応策が用意されている歯科医院を選ぶのも重要です。 とくに、インプラントは埋め込んだ後の定期的なメンテナンスを怠ると「インプラント周囲炎」と呼ばれている歯周病に似た病気にかかるリスクが高くなります。さらに状態が悪くなると、埋め込んだインプラントがグラグラしたり、そのまま外れたりする場合もあるので注意が必要です。 介護が必要になったときや定期的な通院が難しくなったときに備えて、自宅まで訪問診療してもらえる歯科医院を選ぶといいでしょう。
インプラント治療では歯茎を一度切断して顎の部分の骨を削り、インプラントの土台になる部分を埋め込む必要があります。免疫力は高齢になるほど下がっていくため、高齢の方が歯茎を切断したりあごの骨を削ったりすると、傷口から細菌が入り込んだ場合の感染症の発症リスクが高まります。そのため、高齢になるほどインプラント周囲炎などの歯周病や細菌感染に注意が必要です。 高齢になってからインプラント治療を受ける場合は、治療中の細菌感染や術後のメンテナンスの不備による病気の発症リスクが高いことをきちんと把握し、治療に進むことをおすすめします。
高齢になると顎の骨量も減少しやすいです。その場合、顎の骨を増やす手術をしなければインプラントを入れられないため、歯根を埋める前にも手術が必要です。骨を増やす手術は高い技術が必要なため、通常のインプラント治療に比べて技量が高い医師を選ばなければなりません。 また、高齢になると回復力も落ちるため、傷の治りが遅く顎の骨にインプラントを入れても馴染むのに時間がかかるケースが多いです。顎の骨に馴染まなければインプラントが安定せず、違和感を感じる可能性があります。そのため、元の歯に近い噛み心地になるまできちんと経過を診てくれる医師を選びましょう。
今回は、高齢になったときのインプラント治療のメリットや注意しなければならない点について紹介してきました。一般的に高齢者と呼ばれている60歳を越えていて持病がある方でも、かかりつけの内科医から健康状態に問題なしと判断されればインプラント治療を受けられるでしょう。 インプラント治療を受ければ食事をしっかり噛んで楽しめたり、認知症になるリスクを下げたりできるなどメリットが多数あるので、生活の質を向上させられます。ただし、高齢になってからのインプラント治療には感染症や通院が難しくなるなどのリスクもあるため、歯科医やかかりつけの内科医とよく相談してインプラント治療に臨んでください。
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このページは歯科医師免許を取得した品川デンタルケアクリニックの歯科医師が監修をおこなっております。品川デンタルケアクリニックには日本口腔インプラント学会所属の村井医師をはじめ歯科医師歴20年以上、口腔外科経験のある医師が在籍しております。
品川院 院長
村井 東俊 医師
品川院
久道 聡 医師
梅田院 院長
松岡 千恵子 医師